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山田としお メールマガジン377号
収入保険制度の議論が始まった

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    ***山田としお メールマガジン No.377***


                     2016年10月3日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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        収入保険制度の議論が始まった

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【農業者からは大きな不安の声が出されている】

 収入保険制度の議論が、党の農業基本政策検討PTで始まりました。
 1年半前の、平成27年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本
計画」において、「経営の新たなセーフティネットとしての収入保
険制度等の検討」として、「農業経営全体の収入に着目した収入保
険の導入について、制度の仕組みの検証等を行う事業化調査を実施
するなど、制度の法制化に向け、検討を進める。その際、既存の制
度と重複がないよう、在り方を含めて関係を整理する」「また、収
入保険の検討と併せて、農業災害補償制度の在り方を検討する」と
して打ち出されたものです。

 また、約3年前の平成25年11月には、「農林水産業・地域の活力
創造本部」において、「5年後(平成30年)を目途に、行政による
生産数量目標の配分に頼らずとも、国が策定する需給見通し等を踏
まえつつ生産者や集荷業者・団体が中心となって円滑に需要に応じ
た生産が行える状況になるよう、行政・生産者団体・現場が一体と
なって取り組む」ことも打ち出されていました。

 そこで、この間、どんな形での設計が可能かの検討が、農水省で
行われていました。

 ところで、今年のコメの状況は、飼料用米の生産拡大等もあって、
全国的には生産調整の取り組みが進んでおり、需給の均衡が保たれ
る方向に向かっています。そのこともあって、米価は前年産を上回
って推移する見通しです。ただし、農業関係者の間には、まさに上
記の30年産からの国による生産調整が廃止されるということで、将
来への不安が出されていますし、10アール当たり7,500円の直接支
払が廃止されることについても不安があります。まさに、収入保険
制度への移行ということが大々的に喧伝されるなかで、どういう仕
組みになるのかという不安が出されています。

 不安の内容は、
 一つは、生産調整が自治体やJAや農業者の判断にゆだねられる
ことや、自主的という形での、自治体・JA・集荷業者等による農
業再生協議会方式が全国的に機能するかということ
 二つは、収入保険を、多くの生産者の加入を実現するものにでき
るのか、また魅力ある仕組みとして機能させられるのかということ
 三つは、現行の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)との関係は
どうなるのかということであり、とりわけ、収入保険というからに
は農家の収入全部を対象にするものであろうから、複合経営を行っ
ている農家からすると、コメの扱いに加えて、現行の肉用牛や豚の
マルキン、野菜価格安定制度、加工原料乳補給金制度等との関係が
どうなるのかも、重大な関心事です。


【コメ生産農家の心配は自由な競争の世界に入ること】

 とりわけ、コメ生産農家の心配は、国による生産調整の取り組み
を廃止するとなると、生産数量目標の達成・未達成問題が生じ、需
給が緩和し米価の低落が生じるのではないのかということです。そ
のため、今のナラシ対策がやっているように、収入保険と加入者た
る生産者の生産数量目標の達成とを連動させられるのかどうか、と
いう議論が出ています。しかし、国による生産調整の取り組みを廃
止するとなると、収入保険と生産調整の取り組みを連動させられず、
結局、生産調整は生産者やJAや自治体の取り組みに任せながら、
しかし、米価が低落した場合の収入は、すべての加入農家に一定程
度補てんするという形になります。それでは公平性が確保されませ
んし、結局は、自由な価格形成、自由な販売、自由な競争の世界に
突入するということでないのか、という心配です。

 まさに、この政策の方向を踏まえてかからないと、需給調整と連
動しない収入保険の仕組みは導入できないのではないか、というこ
とがあります。

 ところで、党のPTでは、「来年中に法案を仕上げる、そのため毎
週でも議論する」とされていますが、これは心配です。「何が必要
なのか」、そのため「何を仕組むのか」ということがまず整理され
なければならないのに、それがなくて収入保険の仕組みだけの議論
になっていると思うのです。うがった見方をすると、この方向が示
された時は、民主党から政権を奪い、しかし、民主党の戸別所得補
償方式を引きずらざるを得ず、また一律の直接支払も半額(7,500
円)を残しているので、その見直しをせざるを得ないこともあるの
かもしれません。ともかく、需給の混乱と価格の低落という農業者
の不安に応えるとともに、一方で、収入保険による一定の安定した
収入の保証という期待にも応えるものでなければなりません。

 まさに、政策策定の当事者としての党は、これらを丁寧に詰めな
ければならないのです。しかし、私は、そういう形になっていると
は受け止められないのではないか、という心配があります。


【経済界主導の政策提言に問題あり】

 というのは、私は、その背景にあるのは、この収入保険の検討が、
規制改革の立場で出されてきているという心配です。

 それは、平成25年10月に、産業競争力会議でローソンの新浪社長
(当時)がコメの生産調整の廃止を唱え、そして27年1月にも日本
商工会議所の三村会頭(新日鉄相談役名誉会長)が、改めて国によ
る生産調整の見直しと透明・公正な価格形成の場としての民間のコ
メ市場の活性化と、社会政策的な保険ではなく、産業政策的な保険
として、財政負担に頼らない自己責任的な収入保険制度の実施を提
言していたことから類推できます。新浪氏も三村氏も経営者として
立派な方ですが、しかし、産業競争力会議のメンバーとなり、提言
を出すとなると、その内容たるや、規制改革や成長戦略を唱道する
ものであり、以下の柱で構成されています。

 すなわち、(1)国による生産調整を止める、(2)収入保険を導入す
る、(3)自由な流通と価格形成、(4)農地の集積による規模の拡大、
(5)経営マインドを持った経営を目指す、(6)財政負担の軽減等々で
す。まさに、市場原理の導入であり、競争導入であり、農外企業の
参入であり、経営マインドや技術の革新です。見事であり、誰も反
論できません。

 しかし、これが具体化されるとどうなるのでしょうか。多くの小
規模農家は淘汰されます。そして、まさに国が関与する形でのコメ
の生産調整の仕組みが大きく変わることになります。すなわち、自
由な価格形成になり、需給が変動し、低米価が続きかねず、そして
小規模農家は離脱せざるを得ず、その結果として地域の協同は壊さ
れ、日本の安定を支えてきた農村は不安定化してしまうでしょう。
そして、心配しすぎかもしれないのですが、米国のトランプ大統領
候補や、EUからの離脱を決めたイギリスのような思想や事態が招来
されかねないと思います。


【丁寧な議論を行おうではありませんか】

 まさに、今、我々がきちんと議論すべきは、この提案を生んでい
る背景を承知し、生起する事態をどう克服するかです。

 すなわち、
 ・価格形成を自由にすることでいいのか
 ・自主的な生産調整はどこまで可能か
 ・水田フル活用の他作物対策を充実すれば克服できるのか
 ・米価が低落した場合、経営補てんの仕組みは維持できるのか、
  それを収入保険制度の仕組みでカバーできるのか
 ・それらの推移の中で、離農が進み、理念通り規模拡大は可能な
  のか、必要な生産を確保できるのか、中山間地等の条件不利地
  域はどう扱うのか
 ・著しい暴落の時は、在庫等の調整は誰が行うのか、政府はこれ
  を放置するのか
 等々に方向を示さなければならないのです。

 さらに加えて、収入保険というからには、収入の捕捉と、それを
下回った際の補てんが必要になる訳で、そのための青色申告が前提
になりますし、コメだけでなく、他の作物の収入も含めた全体の収
入の変動を把握し、補てんすることになります。その場合、牛肉・
豚肉のマルキン等の、既存の品目ごとの所得補てんや価格変動調整
の仕組みとの関係の整理も必要になります。

 ところで、思い出すのは、10年ほど前の規制改革の論議で、農業
共済の仕組みは人手がかかり国の負担が大きい、民間の保険に移せ
ないか、その際、民間による収入保険の仕組みを作れないかとする
議論があったことです。まさに、今、その議論を復活させ、「成長
戦略の推進」と「既得権益の撤廃」の議論として、やろうとしてい
るということではないのでしょうか。

 改めて、これらのことで、どんな国をつくろうとしているのかを
問わなければなりません。まさに「日本の将来像を共有する」議論
がなされなければならないのです。


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