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山田としお メールマガジン194号
巨大な中国を体感

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    ***山田としお メールマガジン No.194***   
   
                 2010年8月17日発行

        山田としお公式ホームページ
      (http://www.yamada-toshio.jp/)

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                     巨大な中国を体感

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1.訪中の目的

 今回の中国訪問の目的は、中国の食料問題が、わが国のみならず
世界の食料安全保障に関連しかねないとの問題意識のもとで、中国
の大穀物生産地帯を見て、そして食料輸入と備蓄のための大サイロ
群も見て、中国の食料安全保障戦略を体感することでした。

 ところで、ちょうどこの時、大連からハルピンに向かう飛行機か
ら、長春や吉林の大平原を蛇行する松花江が氾濫し、至るところで
緑の農地や村々を茶色に覆っている様子や、甘粛省の土石流で
2,000人を超える死者や不明者が出たことで北京や上海では全ての
国旗が半旗となり、ネオンサインも消されるなどの国を挙げた哀悼
の様子を体感しました。

2.黒竜江省の農業

 中国東北地方の3省(黒竜江省、吉林省、遼寧省)は、中国の食
料確保戦略上、極めて重要な地域だということです。とりわけ黒竜
江省は、中国全土の5億トンにのぼる穀物生産のうち1割の5,000万
トンを生産しています。このうち米は3,100万トンで、中国の米生
産1億8,000万トンの17%を占めています。

 延々と続く圃場は、私がこれまで見た米国の五大湖周辺の大平原、
フランス中部の大小麦地帯をさらに上回るものでした。1974年以降、
人民解放軍が入植して開拓したものであり、これまで国営農場とし
て運営されてきましたが、政府管理のもとにありながら、農場あた
り4〜5万haの規模に分けられ、農業者が入植し、さらにいくつか
の農区ごとに運営されています。

 訪問した857農場では、4万haの水田で1,000戸の農家が生産して
います。5つの農区に分かれ、農区ごとに農業機械や生産米を保管
し、販売しています。大型コンバインが50〜60台も広場に並んでい
ましたが、個々の農家の保有ということです。当然、米も農家の保
有で、農家は機械代と国からの農地の借地料を支払います。差し引
きは農家の手取りとなりますが、機械を持てる者と持てない者が出
て、農地の借地の拡大や農作業の請負などに農家ごとの格差が生じ
ており、これが課題となっているそうです。

 857農場を訪問した翌日には、文化大革命時代に黒竜江省で下放
されて、10年間、当時の国営農場で田植え等の農作業を裸足で行っ
た経験を持ち、今は、中国の中央農村工作委員会の主任(大臣クラ
ス)である陳錫文氏にお会いして意見交換を行いました。陳氏によ
れば、黒竜江省の農家1戸あたりの平均年収(コストを除いた所
得)は5,300元(約8万円)、国営農場の農家はそれよりも高いが、
国営農場でも農業機械を保有している農家は15万元、保有していな
い農家は5万元で、差が出ているといいます。政府としては、中国
内の貧困層への対策が必要であり、助成を行うとともに、穀物価格
の一定水準の維持に務めているとのことです。

3.北良(ベイリャン)−中国穀物保管・物流会社

 大連港は、太平洋に通ずる良港で貿易に適しているのみならず、
後背地に東北3省の大穀物生産地帯を抱え、穀物流通の拠点となる
戦略的な位置にもあります。

 訪問した米良の大規模サイロ群で、1本最大3千〜3万トンを貯蔵
できるサイロが300本近くも林立する威様はすごいものでした。ア
ジアで唯一の食料備蓄の専用バースを有し、150万トンを備蓄し、
バラ積みの貸車を2,400台有し(中国全土の約半数を占めるそうで
す)、パナマックス級船舶(6万トン級)4隻が一度に接岸でき、
港の施設としては世界でも有数といいます。さらに、日本の日清オ
イリオが進出するなど、大豆の搾油施設も有し、将来は60万トンも
の新しいバースの建設や、加工施設を増設するなど、中国全土のみ
ならず東南アジアを視野に入れた食料・貿易・備蓄・食品加工会社
に発展していくとしています。

4.サイノグレイン−政府備蓄国営会社

 国内最大級の国営の備蓄企業であり、これも大連港に近い場所に
あります。備蓄サイロ、平倉、食料油の備蓄等100万トンもの政府
備蓄を行っています。中国政府が定める備蓄目標は、主要食糧であ
る米・大豆・小麦をあわせておおむね国内消費の3ヶ月分(ちなみ
に日本政府の米備蓄は国内消費の1.5ヶ月分)。このほかに、スイ
スからの製粉プラントを設置し、残留農薬等の分析センターも保有
しています。保管期間は、大豆2年、小麦2年、とうもろこし3年、
米はもみで2年程度です。農家から直接買い入れるもの、市場から
買い入れるもの、そして売り渡しは、加工業者に売るといいます。

 買い入れは、通常は穀物相場で買い入れますが、特別の場合は政
府の支持価格によるとのことです。なお、これも陳錫文氏に確認し
たのですが、農家の最低価格水準を維持するために、市場価格が下
がった時に、国としての役割を果たす意義を持たせてあるそうです。
陳氏は、穀物価格は米国等の相場で決まっており、中国をはじめ各
国の農家の力が及ばないことが問題であり、これを解決したいと話
されていました。

5.COFCO−国営の農産物貿易・加工・販売会社

 国営企業ですが、上場も行い、民間会社そのものとなっています。
全農による日本米の販売も行ってくれています。

 全国でもトップクラスの大連精米工場も見ましたが、サタケの各
種機械が動いていました。驚きは、製造技術の責任者がアフリカ人
で、ねらいは南アフリカをはじめアフリカ諸国への米等の加工品の
輸出にあることがうかがえました。

 また、COFCOは、黒竜江省の857農場と有機栽培米の契約栽
培を2万haも行うなど、買取・精米・販売の事業展開を行っていま
す。857農場の近くに30万トンの精米工場の建設も進めているとも
いいます。中国発の国際穀物メジャーになることをねらいとしてい
るのでしょう。

6.上海のカルフール、久光等における米の販売

 上海のカルフールの米コーナーで、我々が訪ねた857農場の隣の
856農場の精米が5kg49.8元で販売されていました。1kgあたり10
元で、これが上海の消費者が購入する一般的な米だということです。
一方、全農がCOFCOを通じて中国でコシヒカリを販売していま
すが、この売り場では2kg198元の価格だったそうです。1kgあたり
約100元ですから、一般的な消費者が購入する米の10倍の価格です。
今の時期は、全農は販売していませんが、いかに高品質の日本米と
はいえ、これでどんどん売れるのかというと容易ではありません。
また、有機米の表示で、秋田小町(あきたこまち)が1kg14元、越
光(コシヒカリ)は1kg24元、バラ売りでは江蘇省の短粒種が1kg
3.6元で販売されていました。もっとも、今日の特売だったのか、
これらは目の前でどんどん売れていきました。

 これも陳錫文氏によれば、中国では1kg5元(約80円)が限度で、
この価格を目標にした生産の仕組みとコスト低減をはかりたいとい
うことでした。

7.中国農業科学院 王副所長

 農民合作社の設立とその体制の充実に全力を挙げており、2007年
に合作社法を施行し、2008年以降、5つの政府方針をその都度示し、
推進しているとのことです。今年の4月までに全国27万社、2,300
万戸の組合員となり、農家全体の10%を占めるようになってきてい
ます。ただし、2009年以降の政府の水利等基盤整備のプロジェクト
の実施と合作社の設立を連携づけてから急に進んできたそうです。
もっとも、規模はまだ小さく、地域のバランスも取れていないとい
います。

 今後は、合作社の税制上の扱い、農産物をスーパー等での販売す
る際の高額・高率のテナント料や手数料、合作社の資金不足への対
処等が課題であり、法律や政策の整備を進めたいとのことです。

8.陳錫文氏と温鉄軍院長との意見交換

 前段でも触れた陳錫文氏との意見交換は、
 ・ 中国政府としては5億トンの穀物生産を確実に確保すること
    が国民への責任であり、そのために全力を挙げること
 ・ 中国の食料政策は自由化し、農家は自由に販売しているが、
    政府の仕事は価格変動幅を決めておいて、最低買入価格を決め、
    国営備蓄会社が買い上げ等で役割を果たすこと
 ・ 政府としては、中国内の貧困層への対策が課題になっており、
    農民合作社の活動に期待していること
 ・ 歴史と歩み方は異なるが、日中の経験の交流の意義は大きい
    こと
 等、内容のある話し合いを行うことができました。

 また、北京人民大学の温鉄軍農業農村発展学院長とも意見交換を
することができました。

9.終わりに

 それにしても、中国は巨大な国で、今回の訪問は「目隠しをして
象に触れる」というごく一部を見たに過ぎませんが、大連や北京や、
とりわけ上海のすごい人並みや服装や消費の盛況さを見るにつけ、
この国はどこへ向かうのか、食料は大丈夫なのか。なにせ、これも
今回の訪中でうかがった話ですが、中国の大豆輸入量はこの1年間
で4,000万トンから5,000万トンへと1,000万トンも増えたといいま
す。日本の輸入量は400万トン、世界の大豆の貿易量は7,000万トン
ですから、これがいかに大きいものかがわかります。改めて驚かさ
れました。

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