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山田としお メールマガジン361号
TPP大筋合意、抜本的な国内対策が必要

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    ***山田としお メールマガジン No.361***


                     2015年10月13日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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      TPP大筋合意、抜本的な国内対策が必要

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  【この5年間、TPP対策に全力】

 TPP交渉が大筋合意に至りました。「とうとうここまで来たか」
と万感迫るものがあります。
 自民党が野党であった5年前の菅政権のときに、TPP交渉参加の議
論が起こった際、「TPP参加の即時撤回を求める会」を作り、今回
農水大臣に就任された森山先生を会長に、政調会長を続投された稲
田先生を幹事長に、そして私は事務局長として、色々の局面で、精
一杯取り組んできた思いがあります。

 その後、自民党が政権復帰し、安倍総理がオバマ大統領との日米
首脳会談で、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品と
いうように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在す
ること」「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃するこ
とをあらかじめ約束することは求められないこと」との共同声明を
発したことを受けて、交渉参加が決断されました。
 以降、「TPP交渉における国益を守り抜く会」に改称し、継続し
て事務局長として動いてきました。この5年間で、議員総会は75回
に及び、その都度、案内、資料準備、会場手配等は私の事務所が担
ってきました。

 野党のときは、私は農林部会長でもあったので、自民党のTPP対
策方針の検討委員会の委員として、当時政調会長代理だった林前農
水大臣とも相談して、党の方針を取りまとめました。振り返ると、
まさに感慨深いものがあります。


【米国の圧力を跳ね返したとはいえ、納得できないことも】

 大筋合意の内容の報告を受けましたが、率直に言って、甘利大臣
をはじめ政府の交渉者はよく頑張られたと思います。よく米国の圧
力を跳ね返したとも思いますが、しかし、納得できない部分も多々
あります。

 一つは、重要5品目の関税削減に手がついたことです。
     ただし、その扱いは相手国、とりわけ米国の要求を念頭
    に、相当きめの細かい対応になっています。

    ・牛肉と豚肉は、日豪FTAで相当の関税引き下げがあった
     が、それを上回る形での関税引き下げとセーフガードの
     発動基準緩和がなされた。

    ・牛肉は、関税撤廃の例外を確保したものの、毎年関税は
     下がり、セーフガード発動の輸入数量も年々拡大するこ
     ととなる。

    ・豚肉は、差額関税制度は維持したものの、従価税は10年
     後には撤廃され、従量税も大幅に引き下げられるため、
     今後どういう形での輸入になるか見定めが必要になる。

    ・コメは、77万トンの既存のWTO枠のミニマムアクセスの
     ほかに、新たに米国と豪州に最高で7万8,400トンの国別
     枠を設けたが、これらのコメは、米国の元々の主張から
     して、米国系のスーパーマーケット等で小袋に入れた形
     で消費者に直接売ることで、米国のコメの品質や価格を
     売り物にして需要を拡大することをねらいにしていると
     みられる。結局、国内のコメの需給が大幅に緩和してい
     る中で、これらの数量についても相当分の主食以外への
     隔離措置が必要になる。

    ・乳製品は、品目によって扱いは異なるが、輸入数量の大
     きい脱脂粉乳とバターについては、既存の輸入枠に加え
     て、TPP枠を定め、ユーザーや商社が民間貿易として生
     乳換算で7万トンの輸入を行うことができるとした。こ
     れは不足時の農畜産業振興機構による輸入(国家貿易)
     とは別に輸入できるものである。なお、関税削減や撤廃
     は行われなかった。

    ・林産物は、品目により異なるが、関税削減や長期の年月
     を経ての関税撤廃後も、セーフガードを維持する形が国
     別に措置された。

    ・水産物は、ノリや昆布等のセンシティビティの高い品目
     は一定率削減するものの関税を残し、関税を撤廃する品
     目は長期にわたって段階的に撤廃するとしている。

 二つは、これまで関税を撤廃したことがない農林水産834品目の
    うちの395品目の関税撤廃が、とりわけ、果実や特産物等
    で行われたことです。

    ・これらのことは交渉過程でも全く明らかにされず、マス
     コミにも報道されなかった。これには驚いた。関係の産
     地の皆さんからは驚きと怒りの声が届いている。これら
     の議論が果たしてきちんとされていたのだろうか。

    ・具体的には、トマト加工品、オレンジ、りんご、パイン
     アップル、さくらんぼ、ぶどう、こんにゃく、小豆、い
     んげん、落花生、茶等である。

    ・品目によって季節・枠内・枠外の関税の取り扱いは多様
     になっているので、影響が出ないよう極力考えているの
     だろうと思うが、影響試算をきちんと行い、対応策や国
     内対策に万全を期さなければならない。

    ・加えて、鶏卵や鶏肉、軽種馬やはちみつ等でも関税撤廃
     がなされた。よくよく考えて対処しているのかどうか、
     きちんと説明がなされなければならない。


【国内対策の柱は三つ】

 ところで、TPP合意に伴う国内対策の柱は、次の三つだと思いま
す。
 一つは、経営所得安定制度の確立です。

    ・それは、関税撤廃等による輸入拡大や価格低下に伴う影
     響を緩和し、国内生産がきちんと維持できる対策でなけ
     ればならない。

    ・もちろん、現状の規模で、被る影響を補償するだけのも
     のでは国民的な理解は得られない。規模拡大や技術改善
     などの対策を講じつつ、経営を継続できる経営所得安定
     対策が講じられなければならない。

    ・現状はコメを中心に、麦や大豆等の作物を加えた形での
     収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)が講じられている
     が、生産者の拠出を前提として、過去の販売価格と単収
     から求められる標準的収入額を基準に、減少分の90%を
     補てんするものであり、大型機械等のコストが上昇して
     所得を減らしているような経営を補てんする仕組みにな
     っていない。評判が悪かった規模要件はさすがに廃止し
     たものの、認定農業者等を対象にしているため対象農家
     は限定されている。これでは安定的な経営所得安定対策
     とは言えない。もちろん、専業的な畜産や野菜農家はほ
     とんど含まれていない。

    ・また、今後の対策で、コメや畜産や野菜専業農家をひと
     くくりにして経営所得安定制度にしてしまうのは現実的
     でない。肉用牛肥育や養豚や酪農は既存の経営安定対策
     の抜本的な充実を図ることが必要だし、11〜13年で関税
     撤廃がなされる養鶏等は、飼料穀物対策も含めて既存制
     度の見直し・強化が必要。

    ・また、コメ等は、輸入拡大分の相当数量を備蓄に繰り入
     れ需給均衡を図ったうえで、価格の変動やコスト増に伴
     う経営所得安定制度の抜本的な強化が必要。
     その際、これまで検討がなされている収入保険制度との
     関連が出てくるが、農業共済と連動する形での収入保険
     制度がそう簡単に設計できるのかどうか、平成29年には
     法改正を行い、30年からの生産調整の廃止と、その際必
     要になる自由な価格形成の仕組みを展開できるのかどう
     か、疑問がないとはいえない。とすると、現行のナラシ
     の制度を改善して、コストの合理化目標等も勘案した形
     での所得補てんの仕組みを考えてゆかねばならない。

    ・特に今後は、日中韓、日EU、更にはアジア諸国等との
     RCEP等のEPA協議が進むとみられるが、それに対処する
     ためには、安定した経営所得安定制度が不可欠である。
     これは若干形は違うが、米国やEUでは定着した仕組みに
     なっているのである。こうした仕組みがないと、毎回の
     交渉は苦労の多い行き当たりばったりになってしまいか
     ねない。

 二つは、国産農産物の需要拡大・輸出対策の制度化です。
     とりわけ、短期間で関税が撤廃される果実等は、輸入品
    との競合が激しくなりますし、輸入品に押されて国産品の
    価格低下も生じかねません。とすると、わが国が誇る高品
    質の果実等は、海外の需要に積極的に応えてゆかねばなり
    ません。そのため、これまでもコメや牛乳でわが国が実施
    してきた、生産者拠出による消費拡大対策に加えて、海外
    の市場開拓も含めた輸出対策を大々的に実施する制度が作
    られてもいいのだと思います。

 三つは、国民合意の形成です。
     というのは、農業者が、約440品目にも上る関税撤廃に
    驚きと怒りを隠せないでいるにもかかわらず、新聞各紙は、
    TPP大筋合意に関する世論調査として、TPP合意を評価する
    59%、評価しない28%、安倍内閣の支持率は46%に上昇し
    ていると報じています(読売新聞)。他紙もほぼ同様の内
    容でした。読者層の農業関係者の比率が少ないため、評価
    しない比率が低いのでしょうが、国内農業に対する国民理
    解が少ないのは残念です。TPPを評価する人が過半数を上
    回るのは、このTPPで自動車をはじめ工業製品の輸出が増
    えて景気が上向くことへの期待なんだろうと思います。
     それなら、今回の合意で利益を得る工業サイドから、困
    難を抱えることになる農業サイドの対策への理解が示され
    てもいいはずです。


【何としても万全の国内対策を実現しよう】

 安倍内閣には、山が多く雨も多い島国というハンディキャップの
もとにありながらも、懸命に努力している日本の農業者への支援を、
国内対策でしっかり示してもらわなければなりません。TPPは、安
倍総理がオバマ大統領と共同声明をしたように、「お互いの国のセ
ンシティビティ」を確認して取り組んだものであり、その根底にあ
るのは「各国の多様な農業の共存」の理念だったはずです。


【さて、ここに来ても心配は尽きない】

 交渉内容は、まだまだ十分な開示がなされていませんし、その評
価も各国で異なっています。米国では、次期大統領選の民主党の有
力候補であるクリントン前国務長官が「支持できない」としていま
すし、また、これまでTPPに積極的だった共和党のハッチ上院財政
委員長が「ひどく不十分だ」と表明しており、今後のオバマ大統領
の署名や議会の批准は混迷するかもしれません。韓国と米国のFTA
は合意後3年かかり再交渉が続けられ、コメの輸入拡大や医療問題
で、韓国は大きな妥協を迫られました。

 また、相手国を訴えることができるISD条項や濫訴防止規定がき
ちんと機能するのか。さらに、わが国の農業が攻められるばかりで
なくて、今回は、米国への牛肉の大幅な輸出枠の拡大や関税撤廃が
実現し、また関税率は現行でも低いのですが、ナシやコメで関税を
撤廃できたのは一定の成果です。しかし、温州ミカンなどは未だに
駄目なのか、わが国からの輸出を阻んでいるSPS(動物衛生及び植
物防疫措置)等がどういう扱いになっているのか、早急に明らかに
されなければなりません。

 引き続き頑張りましょう。



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