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山田としお メールマガジン383号
堅持すべき、生乳の一元集荷多元販売体制

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    ***山田としお メールマガジン No.383***


                     2017年2月13日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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  堅持すべき、生乳の一元集荷多元販売体制

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【今なぜ、酪農制度が問題になっているのか】

 これまで安定していた生乳の流通の仕組みがおかしな論議になっ
ています。大きく見て以下の動きがあります。

 一つは、指定生乳生産者団体(以下、指定団体)の役割や機能やコ
スト等について、これまでも議論がありました。自民党も27年7月
に、集出荷のコスト削減や、経費の透明性の向上等、取り組み課題
を明らかにして改革を進めることを決議し、各指定団体もこれまで
精力的に取り組んできていました。

 二つは、ここ1〜2年バター不足の問題が生じ、マスコミにも大き
く取り上げられ、酪農家の離農が増加する一方で、生乳の流通を取
り仕切る指定団体に問題があるのではないのか等の論議が生じたこ
とです。

 三つは、こうした議論の中で、規制改革推進会議が、指定生乳生
産者団体制度から離れて、自由な流通を行う、いわゆるアウトサイ
ダーによる指定団体攻撃の声を、検討のテーマに取り上げるに至っ
たことです。

 四つは、この間、TPP交渉や、豪州とのFTA交渉や、ニュージーラ
ンド等との乳製品の扱い論議で、国家貿易となっている乳製品輸入
の扱いや、指定団体制度を核とする生乳の扱いについて論議が生じ
てきたことです。

 これまで、毎日搾乳し、腐敗しやすいために敏速に集荷し、需要
に沿って飲用と加工に仕向ける乳業者にきちんと届けるために、酪
農の生産・加工の特性を踏まえた指定生乳生産者団体制度の仕組み
は、しっかり維持しなければならないという前提がありました。政
府も党もそのためにも、集送乳を担う指定団体の役割を担っている
酪農協等の自主的な改革の取り組みが必要であることを決議し、農
水省もそのための通達を出し、指定団体並びに酪農協等も、改善に
向けて着実な取り組みを行ってきていました。
 
 ところが、規制改革推進会議は、3年前から続く、JA改革、全
農改革に次ぐテーマとして生乳の指定団体制度を取り上げ、指定団
体に出荷しない、いわゆるアウトの酪農家による自由販売を、規制
改革の格好の材料として取り上げました。農政新時代という観点か
ら安倍総理も、わざわざ通常国会の施政方針演説で「農協経由に限
定している現行の補給金制度を抜本的に見直し、生産者の自由な経
営を可能とします」と演説し、また、「政府広報・農林水産省」名
で、全国の地方紙に1ページ全面を使って、「農業改革待ったな
し」「日本の農業をもっと強く」「資材価格の引き下げ」「流通・
加工の構造改革」等の見出しに並んで、「酪農家の自由な販売を支
援」「生産者が自由に出荷先を選べる制度に改革、指定団体以外へ
の出荷者にも補給金を交付」を広告したのです。


【酪農生産の特徴と、求められる需給の調整】

 ところで生乳の生産出荷は、毎日搾乳し、集乳・出荷しなければ
ならないという特性に加えて、飲用向けは夏季に需要が強いが冬季
は需要が落ち込むことから、一定量を加工に仕向けるという調整が
どうしても必要になることであります。

 さらに、都府県の大消費地等の需要の多いところは大半の生乳は
飲用に仕向けることができますが、酪農生産適地である北海道は遠
隔地にあり、牧草も確保でき、生産コストは比較的低いものの、飲
用乳を都府県の大消費地に運ぶためのコストが大きいという問題が
あります。だから、北海道の生乳生産の8割は加工に仕向けざるを
得ない特性を持っています。

 加えて飲用仕向けは、キログラム当たり100〜110円の手取りがあ
りますが、加工仕向けは60〜80円程度にしかなりません。そのため、
加工仕向けには、加工原料乳交付金等暫定措置法により生産コスト
に見合う補給金が措置され、生乳全体の安定供給とスムーズな加工
仕向けによる需給調整が図られてきているのです。

 ところが、こうした生産・流通環境の中で、いわゆる「フリーラ
イダー」と言われる酪農家を生むことになりました。飲用向け、加
工向けという需給調整が求められる指定団体に加入しないで、価格
の高い飲用仕向けを中心に出荷する酪農家やグループの出現です。
制度上は、特色ある酪農生産・加工により、特別のプレミアム飲用
乳や乳製品を製造供給する酪農家や乳業者には1日3トンまでの特別
枠を設定できるようにしていますが、指定団体を通さず、かつ需給
計画に従わず、飲用向けに出荷販売する酪農家やグループが出現し
てきたのです。

 現行制度上は、指定団体の制度にどう加わってもらうかというこ
とが必要なのですが、規制改革推進会議サイドからは、自由な生産
流通を縛る現行制度の仕組みをこそ改変すべきという主張になって
しまったのです。

 ところで、北海道の例を見るまでもなく、指定団体出荷の生乳は、
加工仕向けの割合が高くても乳成分の評価もあって、飲用と加工の
プール価格は相当の水準を確保できているといいます。しかし、自
由な出荷先を選ぶフリーライダーの生乳は、飲用向けが圧倒的に多
いにもかかわらず、冬季の飲用の需要が減少し価格も低くなる時期
にあっても飲用の出荷を行っていること等から、買取価格は必ずし
も高いレベルを確保できていないといいます。約束に従わず自由に
売れれば改革だ、というだけでは単なる自己満足なのであって、そ
れらの自由販売にも補給金が交付されるべきというのは納得できま
せん。


【政府と党の間で深刻な議論】

 では、政府がどんな形で提案をしているのか、詳細は未だ不明で
す。計画生産や、飲用・加工仕向けへの調整が必要という実態の中
で、自由な販売(フリーライダー)をどう取り込むかで苦慮してい
るのだと思います。当然、党の幹部間でも深刻な議論が続けられて
いるとみられます。

 2月9日にJAグループが開催した与党幹部と全国の酪農関係との
意見交換会でも、JA代表者の「需給の調整を行う指定団体への全
量委託が前提である」との主張に対して、与党幹部も「部分委託を
どんな形で取り込むことができるのかが最も難しい」と苦慮の様子
でした。この点は、イギリスで永年続けられていた国による全量管
理の制度を撤廃した後、需給が緩和し大幅な価格低下と廃業が生じ、
乳業者も外資に買収され、乳製品の輸入拡大も進み、需給調整の手
段を失い大混乱が続いている状態にあるといいます。これは、昨年
10月に、大手の乳業メーカー等が現地に赴き調査した結果です。

 しかし、飲用乳への販売を目指して生乳の受け入れを求めてくる
フリーライダーの酪農家やそのグループを、どう制度の枠内に組み
込むことができるのでしょうか。
農水省は、指定団体が出荷申し込みを拒否できる生乳は、「季節的
に増減していること」「短期的なものであること」「特定の用途へ
の販売であるもの」等を挙げているようですが、まさにこの要件が
厳格に運用されれば、確かに飲用乳を中心に自由販売を求めている
フリーライダーの生乳を受け入れることはできません。

 とするなら、こういう規定を入れてまで、今、自由販売を行って
いる酪農家を取り込むことをやらなければならないのか、これらフ
リーライダーに補給金を出すことをやらなければならないのか、理
解できません。これは、例えば、コメの生産調整に取り組まなかっ
た生産者に対して、なんとか理屈をつけて、生産調整助成金を交付
することを国が懸命に努力するようなものです。ここまでして、
「自由な販売者に手を打った」と規制改革推進会議に説明するため
の検討を行わざるを得ないのでしょうか。
 ともかく、飲用需要が落ち込む冬季に、加工仕向けを行わず飲用
のみに出荷し価格を低下させている行動を、「自由な販売を支援す
る」という形で評価する規制改革推進会議の動きは絶対に認めるこ
とはできません。


【酪農家の経営所得安定制度が検討されなければならない】

 今回、農水省は、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法が「暫
定」措置であることから、これを廃止し、畜産物の価格安定に関す
る法律(畜安法)のもとにおける制度として法改正を検討していま
す。その意図やねらいは十分聞かされていませんが、「単に暫定を
とる」ということだけでない、何か他の狙いがあるのではないのか
と疑りたくなります。むしろ、これまでの規制改革推進会議の農協
攻撃や改革の主張にみられるように、一連の農協がやること、なす
ことが気に入らないので、「指定団体=農協」というこれまでの構
図を廃止し、農協から自立した酪農制度を想定したものなのかもし
れません。

 しかし、私は、このことをむしろ前向きにとらえています。すな
わち、牛肉や豚肉も畜安法に位置付けられ、その後、牛肉も豚肉も
通称マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)という経営所得
安定対策が講じられているのです。生乳についても改めて畜安法に
戻したうえで酪農経営全体の経営所得安定対策事業を実施する形が
必要だと考えるからです。

 とりわけ、TPPは消えかかっていますが、日EUの経済連携が進も
うとしていますし、日豪FTAは締結され乳製品の輸入拡大が心配さ
れます。こうなると酪農全体の経営を安定させる仕組みが何として
も必要になります。
 性急に、生乳の指定団体制度を見直し、自由な販売を行いかねな
いフリーライダーを容認し、安定的な酪農生産と生乳の供給をこわ
すのでなく、まさに酪農家の経営と所得の安定を目指す対策をこそ
進めるべきなのです。


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