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山田としお メールマガジン367号
国家戦略特区における企業の農地取得は認められない

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    ***山田としお メールマガジン No.367***


                     2016年2月16日発行

                山田としお公式ホームページ
            (http://www.yamada-toshio.jp/)

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   国家戦略特区における企業の農地取得は認められない

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【農業を専業としない会社の農地取得を大々的に認める動き】

 怖れていたことが起こりました。
 国家戦略特区における株式会社の農業参入については、これまで
も検討がなされてきましたが、ここに至り、参入要件を緩和して、
出資比率(議決権)を現行の4分の1から過半を超える比率まで認め
るよう、今国会での国家戦略特区法の改正を主張しだしたことです。
農地をリースする形での会社の参入は、平成21年から認めています
し、昨年の農地法の改正で出資比率は2分の1未満(50%未満)まで
緩和し、今年の4月に施行となっています。それを待たずして、特
区に限ってですが50%以上までも認めようというのです。加えて、
これまでは会社の事業は農業による売上高を2分の1以上として、農
業関連会社であることを要件にしていたものを、2分の1未満でも認
めようとしています。要は、農業外の事業を中心とする会社が、農
業に参入し、農地を取得し、議決権も過半を占め、他の構成員の主
張に拘束されずに経営判断ができるようにするというものです。

 これは一体どういうことなのでしょうか。
 本来的に農業生産の源である「農地」(これは他の資産と異なり、
流動化せず、作物生産の源であるのみならず、国の基である国土形
成の基(源)でもあるものですが)、これを会社・資本が手に入れ
て効率的に動かそうという発想です。


【心配は尽きない】

 農業者は、農地を相手に、気候風土に合わせ、太陽や雨の恩恵を
受け、家族が相協力して、作物を育て、販売し、所得を実現し、生
きてきました。利益が出なければ、それに耐えながら生きてきまし
た。その状況は今の近代化した農業経営の現場でも変わりません。

 一方で、企業の思想は、資本が要求する利益を追求し、従業員を
雇用し(場合によればアジアの低賃金の労働者を雇用しながら)、
利益が出なければ、一気に生産から手を引き、従業員は解雇し、残
された農地は商業や工業等の他の用途に転用することもやりかねま
せん。

 国家戦略特区の根底にあるのは、要は、自然重視の摂理から、資
本重視の摂理へと、農業・農地・農業者・家族・地域のあり方を切
り替えてしまおうという発想です。確かに、これで生産力は上がる
かもしれません。しかし、農地は、地域は、家族を中心とする農業
者(農家)は消えてしまうでしょう。

 ましてや、現に外国資本企業の投資は制限されていません。外国
企業が日本法人を設立して農地を取得して農業経営を行うことは当
然避けられないのです。


【総理は、最も大切な国益は、日本の農村の国柄とおっしゃってい
ました】

 総理は、著書「美しい国へ」において、また、党大会において、
全国の農業者が集まったJA全国大会において、「最も大切な国益
とは何か。日本には世界に誇るべき国柄があります。息をのむほど
美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、
水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統があります。自助自立を
基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば村の人たちがみん
なで助け合う農村文化があります」とおっしゃっていました。同時
に、「強欲を原動力とする市場主義経済の道をとってはならない、
道義を重んじ、真の豊かさを知る瑞穂の国の資本主義を目指してま
いります」ともおっしゃっていました。皆、感動しました。ところ
が総理の「国柄」は、株式会社の農地所有による参入なのでしょう
か、それも本業でなく、片手間の農業参入という形なのでしょうか。

 私は、デフレ下で停滞していた日本を活性化すべく打ち出された
アベノミクスの成長戦略の推進は賛成です。しかし、このことと、
成長戦略を阻害している規制の岩盤を打ち破るべく、農業に会社を
大々的に参入させる思想や理念はどこで辻褄が合っているのか、理
解できません。

 総理は国家戦略特区諮問会議の場で、「岩盤規制全般について、
国家戦略特区によって、改革の突破口を開く、2年前の国際公約で
す」「タイムリミットは、本年度末に迫っています」「それぞれの
規制を担当する大臣に、実現の方向で対応策を検討していただき、
最終的には私の判断で進める」とおっしゃっています。国際公約と
おっしゃっているのは、平成26年1月のダボス会議での発言である
「既得権益の岩盤を打ち破る、いかなる既得権益も私のドリルの刃
から無傷ではいられない」ということなのでしょうか。

 ところで、総理は、ダボス会議後の同年3月19日の参議院予算委
員会で、私の質問に対して、「所有権取得による農業参入は、農地
が耕作放棄された場合に、リース方式であれば、契約を解除し、そ
して原状回復は容易でありますが、所有権取得の場合はこうしたこ
とができないため自由化をしていない、これは今でも同じ考えであ
ります」と答弁されているのです。総理、今になって考え方を変え
られたのでしょうか。

 総理にお願いします。大きな決意で第二次内閣を作り上げられた
時の思いに立ちかえっていただきたいのです。第二次内閣で重用さ
れることとなり、極端な規制改革の議論をリードされている竹中平
蔵氏(国家戦略特区諮問会議有識者議員)(パソナの会長であり、
今回、養父市の特区にも進出しているオリックスの社外取締役)な
ど利害関係者を外すべきではないのでしょうか。


【関係者による農業の担い手確保に全力を挙げねばならない】

 もちろん、我々は、こうした会社の参入問題が出てくることの原
因を探り、これらの問題の解決に全力を挙げなければなりません。
すなわち、農業の若い担い手がいれば会社を参入させなくてもいい
のに、それがいないから、兵庫県養父市のような山間地の必ずしも
条件の良くない地域で、背に腹は代えられず会社の参入を求めざる
を得なかったということがあります。

 こうした口実を与えないように、農業の担い手づくりに向けて、
JAも自治体も農業高校関係者も全力を挙げなければなりません。
もちろん、若い担い手が就農を決断できるような作物対策、販売の
工夫、その上での条件不利地域における所得補てんの対策等の政策
も不可欠です。このことに関係者は全力を挙げましょう。

 ところで、養父市は条例を定め、参入企業から10アール当たり1
年3万円を積立金として5年間徴収し、その後は徐々に返還しながら、
その積立金を農地を荒らしたり撤退した場合の農地復元の元手にす
るのだといいます。特区諮問会議はいかにもそのことを高く評価し、
総理も「よそ者の企業は農地を荒らすのではないかという地域の懸
念を払しょくするため、企業の負担で原状回復できる仕組みを設け
たのです」と高く評価されていますが、よほど山間の荒廃地という
ならわかりますが、最大10アール当たり15万円で何の保証になるの
か、それも6年目以降会社に返還して不足が生じれば、市が負担す
るのだといいます。


【フランスの取り組みに学ぼう】

 私は議員になってから、担い手づくりに焦点を当ててヨーロッパ
を訪ねました。それは、当時野党になった自民党が、私を「担い手
総合支援新法プロジェクトチーム」の座長に指名したからでもあり
ます。フランスが、担い手の育成策として、サフェールという、若
い農業者の就農を支援する仕組みを持っていたため、それを調査す
ることが目的でした。その際のまとめを、当時のメールマガジンに
書いています(平成23年1月17日発行 210号「駆け足でヨーロッパ
を訪問」
https://www.yamada-toshio.jp/mailmagazine/txt/00210.html)。

 サフェール政策の基本は、売りに出された農地の情報が公的機関
であるサフェールに届き、先行して買い取り交渉にあたることがで
きることです。その思想は、青年農業者の就農を確保することを焦
点として、21歳から35歳までに限定して、事前に3〜5年の技術研修
や経営研修、さらには農家実習を積んだ者だけを対象に、営農が可
能な一定規模の農地と営農資金を提供するものです。農外からの新
規就農だけでなく、大半は子が親から経営を引き継ぐ形が多いので
すが、その場合でもこの仕組みにより就農することになるそうです。

 農地の取得にあたっては、投資目的は絶対に認められず、まず、
隣接する農地の農業者を優先し、次に公募の新規就農者と交渉する、
そして、既存の農業者の場合は、現に所有する農地との距離は5km 
以内と条件を付けています。新規就農者の場合は、取得する農地に
隣接して住むことが条件になっているのです。要は、きちんとした
農地の有効活用を基本に、担い手を作り上げる、定着させることを
条件にしています。自立的な農業者を作ることも、思想として政策
として確立しているのです。なお、米国では州によって、一般の会
社の農業参入は原則認めていません。このサフェールの先買権の仕
組みは農地移動の20%を占め、青年農業者への優先的売り渡しが行
われているそうです。 

 もう一つ、日本とは異なる環境があります。それは、農地が売却
の対象として市場に出てくるのは、高齢農家はリタイアして都市や
街に住むことが社会の動きになっているからです。離農年金もあり
ますが、農地売却による所得で都市や街に住み老後を楽しむという
生活の形態が歴史的にあるのです。政策的にも、都市と農村田園地
帯が隔離されているという、日本とは全く異なる国づくり都市づく
りがあったことも影響しているのでしょう。確かに、ヨーロッパで
はどの国も、農地は農業のための大切な資産という意識が強く、
ゾーニングによる農村区域の設定と転用の規制があり、道路等の公
共的なインフラ整備を目的とする国等による買い入れはやむを得な
いものの、転用には大きな税負担を課すことで、転用を抑制してい
ます。

 かつての日本の農村にも隠居制度がありましたが今はほとんどあ
りませんし、農業者年金もありますが、限定的なものでしかありま
せん。
 先日、農林水産業骨太方針策定PTの人材力強化検討チームの会議
資料に、日本の農業者はいかに高齢化しているかということで、日
本は65歳以上が61%、一方フランスは65歳以上が3%、ドイツは9%、
イギリスは18%、アメリカは28%という各国の比較表が農水省から
出されました。出席している議員に、いかに日本が高齢化している
かを印象付けるにはいい図表だったのかもしれないのですが、日本
以外の国々の高齢者は離農するという社会慣習や年金制度があるこ
とへの言及や注釈が全くないものでした。今から考えると、日本は
これだけ高齢化しているのだから「会社を参入させるしか方法がな
いのだ」と誘導する図表ではなかったのかと疑りたくもなります。


【総理、「日本の将来像を共有しましょう」】

 私は、総理に、「総理、日本の将来像を共有しましょう」と訴え
たいのです。
 成長戦略一点張りでなく、「規制の岩盤を切り崩す」というので
なく、日本の農業と、農山村と、農地が抱えている課題を丁寧に分
析し、「農地の活用」と「担い手・農業者のイメージ」と「家族」
と「地域の協同」と「日本の農業の特性」と「日本の歴史と国柄」
とを共有しましょう。その上で、「どこをどう改革するか」「どこ
に手を打つか」「担い手をどう育てるか」、総理のお考えになって
いる「日本の将来像」を、私も「共有」したいのです。



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